【髙島野十郎展】担当学芸員による見どころ解説①

本日10月5日(土)に、「新たな髙島野十郎展」がオープンしました!皆様に展覧会を深く味わっていただくため、本日より会期終了後まで、髙島野十郎展に関する担当学芸員による記事を不定期でアップしていきたいと思います。
第1回目は、本展で初公開となった奇跡の新発見作品《廃墟 横浜南京町》についてです。

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髙島野十郎「廃墟 横浜南京町」大正12年(1923)、個人蔵

今回の「新たな髙島野十郎展」でぜひともご覧いただきたい作品のひとつが、この作品です。
大正12年(1923)9月1日に発生した関東大震災で被災した横浜の南京町の無残な姿をとらえています。横浜南京町といえば、様々な中華料理店が軒を連ねる中華街として今では知られていますが、震災以前は、欧米人も多い一般的な外国人居留地でした。震災後、中華街へと発展していきました。
当時、野十郎はすでに個展も開き、青年画家として東京で活躍していました。現・渋谷区神宮前に住んでいた野十郎も被害に見舞われたでしょうが、震源地に近く帝都以上に被害が甚大であった横浜にわざわざ出向いて描いたと思われます。あるいは横浜滞在中に震災に遭遇したのかもしれません。
時事的な主題や対象を描いた野十郎の作品は、これまで見つかっていませんでした。太平洋戦争の折にも東京で空襲に遭った野十郎ですが、戦争に関連した作品もありません。
なぜ関東大震災に関わる作品を描いたのか。本作の左上にサインと「sep.1924」の年記があり、描かれたのはちょうど震災1年後になります。年記を画面に書いた野十郎の作品は、本作以外に見つかっていません。震災1年後の鎮魂のメモリアルという意味が含意されていた可能性も考えられます。
移りゆく時代や世相に関わりのない対象を描く野十郎になにがあったのか。謎の多い一枚です。
(担当学芸員/西本匡伸)

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