福岡県立美術館
Fukuoka Prefectural Museum of Art
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【レポート】 オーギカナエ 森で会いましょう

福岡県立美術館コレクション展Ⅱ関連企画 <スザキの森のアートピクニック>

「オーギカナエ 森で会いましょう」展

2021.7.13(火)-7.18(日) 10:00-18:00 1階彫刻展示室 入場無料

「記憶に残したい須崎公園の森を通して<人と森>についてもう一度考える展覧会です」(オーギカナエ)

リニューアルが決まり、現状が大きく変わる須崎公園。その「森」をテーマとした展覧会を今夏開催しました。出品作家はedukenbiにも登場したオーギカナエさん。展覧会には、オーギカナエさんの作品だけではなく、6月に開催した森のワークショップ成果物も展示しました。

会場で一際目を引く《人と森<思い出地図>》は、オーギカナエさんが描いた大きな須崎公園の絵に、訪れた人が人型に切り抜かれた紙に須崎公園の思い出を書いて残していくという参加型の作品でした。様々な言葉をのせた色とりどりの人々のシルエット。言葉の一つ一つがあたたかな思いにあふれるもので、やさしく心にひびきます。展覧会「森で会いましょう」はオーギさんの作品と須崎公園や会場を訪れた人の思いが自由に軽やかに交差する、「公園」のように開かれた、パブリック(公共的)な空間にもなっていたように思われます。

子どもたちやオーギさんが描いた「木の肖像画」や、オーギさんが木々と公園が積み重ね一年一年を思いつつ描いたいくつもの円、ユーモラスなシルエットの色とりどりの紙に記された無数の公園をめぐる思い出…。さまざまな色彩や形、言葉のざわめく「森」の中で、須崎公園の過去と未来を思い、森の記憶を掘り起こし、木々の生と時間と向き合い、共有する時間がそこには生み出されていました。

1951年の開園以来、天神という街に寄り添い続けた須崎公園。福岡県立美術館も、また、ずっと須崎公園とともにあり、この生き生きと植物が繁茂する公園は多くのアートの現場ともなった。その須崎公園は福岡市の新しい拠点文化施設の建設とともに大きく姿を変えようとしている。

<ここ>に集い、刻まれ、錯綜する、さまざまな記憶と思い。オーギカナエは、柔らかに、真摯に、そして明るく軽やかに、それらを解きほぐし、紡ぎなおしていった。<人>、そして<森>の声に耳を傾けながら。オーギが生み出したのこの空間が、多声の中で一つの選択をしていく私たちにとって、須崎公園の変化に向き合うよすがとなることを願っている。「じゃあね」という言葉とともに。

藤本真帆(福岡県立美術館)

オーギカナエの〈森〉はいつも違った表情をみせる。子どもたちが遊ぶ、光差す柔らかな森(「森のたね」福岡市美術館キッズコーナー)、足を踏み入れることを少しためらうような影の濃い森(個展「topping of lifeオーギカナエの森へようこそ」2009年/ギャラリーアートリエ)。

今回の〈スザキの森〉はどうだろう。もうじき姿を変える公園のパブリックな要素を手がかりに、ワークショップや作品を通して森の記憶を共有し、人と自然との関係性を思い巡らすことができる開かれた森だ。じっくりと森が育んできた時の欠片が、ここで出会うかもしれない。ひと時の間、美術館に現れた森のざわめきを丁寧につむぎたい。

原田真紀(企画協力/インディペンデント・キュレーター)

会場写真:牛嶋木南

インタビュー「オーギカナエ アーティストの日々」

講師・出品作家 オーギカナエ(現代美術アーティスト)
https://www.ohgikanae-works.com/
1963年佐賀県唐津市生まれ。久留米市在住。光りや森といった自然や風景、生活から「かたち」をつむぎ出し、わたしたちが生きている時間や空間を考えるきっかけを、作品を通してつくっている。絵画やワークショップ、舞台美術のほか、移動式のイエロースマイルの中で行うお茶会など様々な表現に挑戦している。

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