入場は17時30分まで
次の方々は無料
65歳以上の方/身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方及びその介助者/教職員が引率する小・中・高等学校・中等教育学校・特別支援学校の児童生徒及びその教員/会期中土曜日来館の高校生以下の方。
2015年に開館30周年を迎える福岡県立美術館。当館では、その前身である福岡県文化会館も含めると約50年という長い歴史の中で、様々な作品をコレクションとして収蔵してきました。本展は、「福岡の近代洋画」、「福岡の日本画と彫刻」に続く、開館30周年を記念したコレクション展連続企画の第3弾です。今回特集するのは「現代美術」です。福岡県立美術館は、開館記念展「変貌するイマジネーション」が「現代美術」の展覧会であったことをはじめ、いま生まれつつあるアートシーンにも目を向け、積極的に紹介し、「現代美術」と深く関わり続けてきました。
「現代美術」。それは一体どのようなものなのでしょうか。言葉から推測すると、どうやら、「近代」ではなく「現代」のもので、「洋画」や「日本画」、「彫刻」とはちょっと違うようです。 「近代」と呼ばれる時代のなかで、「美術」は洗練されていくとともに、整理され、制度化され、決まりごとのようなものができていった側面があります。すると、時に、私たちが直面していることや、表したいと思う気持ちとずれてしまうことがでてきました。そのため、それらの枠組みや決まりごととの距離をはかりつつ、「いま」、そして「ここ」に生きる私たちにとって切実な表現のカタチを求めていった人たちがいます。そこから生まれたのは、例えば、“いま・ここ”を取り巻く制度や社会を、あるいはそれらへの問いかけを既存の表現の枠組みにとらわれずに可視化していく作品。例えば、「美術館の展示」の暗黙のルールを越え、“いま・ここ”にこそあれと作り上げられていった作品。例えば、”いま・ここ”に在る己をこそ原点としていくことを宣言する作品。それらの作品は、半ば定式化された「美術」への疑いもはらんでいるがために、非常に多種多様な方法で表現されていきました。一方で、多様化する表現の時代にあってなお、これまでの形式の力を信じ深みを目指していった人たちもいました
本展では、“いま・ここ”と向き合い続けてきた美術の諸相を当館の収蔵品を通してご紹介します。
*あわせて1階展示室にて連動企画展「あること」を開催(7月14日~26日)いたします。
【関連イベント】
講演会 「“いま・ここ”を巡って 福岡県立美術館と現代美術と」
日時/2015年7月4日(土)14:00~15:30 講師/藤本真帆(福岡県立美術館学芸員、本展覧会担当)
*4階視聴覚室にて(定員80名)、参加無料
学芸員によるギャラリートーク
*毎週土曜日14時より40分程度 (だだし、上記講演会の日を除く)
菊畑茂久馬 《天動説 六》 1983年
灰色の絵具で厚く塗りこめられた高さ2メートルを超す画布。その中央には棒状の物体が縦一直線に取り付けられています。独特の質感は油絵とともに蜜蝋が使われていることによるのでしょう。モノクロームの画面は色彩こそないもののどこか雄弁な存在感を放っています。
題名は《天動説 六》。16点ある「天動説」の一つです。1983年の個展で8点の「天動説」が発表され後、85年に当館の開館記念特別展「変貌するイマジネーション」で全16点が初めて展示されました。いずれも画面に棒状の物体があります。棒が複数のものもあり、画面におけるその構成も様々です。画面に食い込み、取り込まれ、張り付き、突き出るといったその様子はまさしく「もの(オブジェ)と平面のせめぎ合い」です。
この16点は天動説を絵画的に表現しようとしたものではありませんが、「天動説」という言葉はこの時期の菊畑において重要な意味を持っています。菊畑は「九州派」への参加等を通して一躍脚光を浴びましたが、約20年間本格的な新作発表を中止します。その沈黙を破り発表されたのが「天動説」でした。地球を中心に天は動く。葛藤と沈黙の末の作品「天動説」は、おのれを原点とし、おのれを標準として作品を展開していくのだという決意表明ともいえるでしょう。