小さな入り江に抱かれて広がる紺碧の海が印象的です。さっと画面を撫でるように純白の絵具で引かれた波が、海の青さを引き立てるとともに、画面に軽快な動きを与えています。じっと見ていると、波や風の音が聞こえてくるようです。 …
ベトナムの民族衣装であるアオザイを身にまとい、片膝を立てて椅子に座る女性を描く本作は、福岡県宗像市出身の洋画家・中村研一(1895~1967)によるもの。モデルとなったのは彼の愛妻・富子。女性の口元や手元、爪先に差された赤色の化粧や、彼女が座るカンチレバーのスチール椅子が作り出す軽やかな曲線が印象的です。またアオザイの淡い紫色と白色、荒く大胆なタッチで描かれた緑色の庭、そして画面に満ちた明るい光は爽快で闊達な画面を作り出し、女性を引き立てています。 中村研一は官展の重鎮として活躍した作家で、正確なデッサンと…
鮮やかな赤を画面いっぱいに用いて、紅葉した櫨の木を描く本作は、福岡県久留米市出身の洋画家・松田諦晶(まつだていしょう、1886~1961)によるもの。赤をはじめ、黄や緑、青、茶などの短い色の線を重ねる、印象派を思わせ…
今の季節、暑い夏にぴったりの作品ではないでしょうか。 青い空にもくもくと立ちのぼる白い雲、波も高い海岸で働く人たちと4頭の牛。仕事が終わるのを待っているのでしょうか、赤い傘を差した女性が一人立っています。雄大な自然と…
一見したところではあまりふしぎに思わないかもしれません。けれどしばらく見ているとそのふしぎさの虜になる、そんな絵。とくに小さい人(子ども)たちは大好きな絵です。 「空に浮かんでいる白いもの、これなにかな?」と尋ねると…
幾何学柄の一枚の着物を前にして、ひとはそこになにを見るのでしょうか。 濃淡2種類の藍をベースにして、白と黄色の線が縦横に走っています。よく見れば白の横線は直線ではなく鎖状。着物の静かな印象の中にわずかな動きをもたらし…
さびれた繁華街なのでしょうか。大きな通りに人らしきものがぼつんと描かれています。空が青く、影が長くのびているのを見ると時間は朝早く。車も通らず、ただそれだけの風景。画面右側に立ち並ぶ白いビル群には窓すらも描かれていま…
富士五湖のひとつとして知られ、写生旅行が大流行した明治時代以降、多くの画家たちに愛された山中湖。その山中湖をいだく風景を、単純化した構図と力強い筆致とで描きだす本作は、近代日本を代表する洋画家・藤島武二(1867~1…
躍動的に交錯する線が印象的な作品があります。題名は《駆ける》。福岡県八女郡(現・筑後市)出身の井上三綱(いのうえ・さんこう 1899~1981)の作品です。同郷の大家、青木繁や坂本繁二郎から強い影響を受けながら、日…
まるでルービックキューブのようなカラフルな小箱。実はこれは漆の箱。1930年代の沖縄でデザインされて、つくられました。当時どれほど斬新なデザインだったのかを、いまでも色あせることのないその印象から想像できるかもしれま…
新年明けましておめでとうございます。この一年がみなさんにとって健やかなものとなることを祈りまして、今年最初の「所蔵品200選」はこの清々しい久留米絣から。 白、淡藍、中藍、濃藍とつづく藍染のグラデーションがたくみに活…
紙に墨一色で描かれたまるで抽象画にしか見えないこのふしぎな絵は、左下のサインがなければ上下左右も判然としません。サインには「U.Ueda」。日本画家 上田宇三郎(1912-1964)が49歳のときに描いた作品です。題…