福岡市出身の今中素友(いまなか そゆう/1886-1959)は、はじめ地元の上田鉄耕に絵を学び、さらに19歳で上京、当時新進気鋭であった川合玉堂に師事します。その門下で修行に励み、また新たな画境を求めて北海道を遊歴し…
濃淡を交えた墨線がにじみ、からみ合いながら山肌を構成し、単純化された牛や人は童画にも似た趣がうかがえます。墨の動きは自由自在、奔放な魅力に富んだ山喜多二郎太(やまきた じろうた/1897-1965)の水墨画です。 か…
「玄海灘」と題された一対の大型木彫は、冨永朝堂(とみなが ちょうどう/1897~1987)が60歳代半ばに手掛けた連作です。 1点は、玄海の沿岸で見られる玄武岩の柱状節理を題材に、剛直な六角柱が幾重にも重なり突き上る…
福岡県糸島郡北崎村(現・福岡市西区)に生まれた板谷房(いたや ふさ/1923-1971)は、東京美術学校を卒業した翌年にフランスへ渡り、終生パリの地でパリジェンヌや動物を題材に、つややかで優美な線描と鮮麗な色彩を画面…
青のモノトーンによる画面に、二重写しになった和装洋髪の女性。 日本画家・上田宇三郎(うえだ うさぶろう/1912-1964)は、この妖艶な雰囲気をかもし出す「人物 二重像」を終戦直後に開催された西部美術協会展へ出品し…
季節は初冬、枝に残された柿の実はごくわずかです。刈り取られた田圃や群れ飛ぶカラスが、寒々とした気分をいっそう高めます。 薄暗い木立の入口には鳥居が、その先に社殿が垣間見え、さらに画題の「かひこの森」から、本図は「蚕の…
小さな入り江に抱かれて広がる紺碧の海が印象的です。さっと画面を撫でるように純白の絵具で引かれた波が、海の青さを引き立てるとともに、画面に軽快な動きを与えています。じっと見ていると、波や風の音が聞こえてくるようです。 …
ベトナムの民族衣装であるアオザイを身にまとい、片膝を立てて椅子に座る女性を描く本作は、福岡県宗像市出身の洋画家・中村研一(1895~1967)によるもの。モデルとなったのは彼の愛妻・富子。女性の口元や手元、爪先に差さ…
鮮やかな赤を画面いっぱいに用いて、紅葉した櫨の木を描く本作は、福岡県久留米市出身の洋画家・松田諦晶(まつだていしょう、1886~1961)によるもの。赤をはじめ、黄や緑、青、茶などの短い色の線を重ねる、印象派を思わせ…
今の季節、暑い夏にぴったりの作品ではないでしょうか。 青い空にもくもくと立ちのぼる白い雲、波も高い海岸で働く人たちと4頭の牛。仕事が終わるのを待っているのでしょうか、赤い傘を差した女性が一人立っています。雄大な自然と…
一見したところではあまりふしぎに思わないかもしれません。けれどしばらく見ているとそのふしぎさの虜になる、そんな絵。とくに小さい人(子ども)たちは大好きな絵です。 「空に浮かんでいる白いもの、これなにかな?」と尋ねると…
幾何学柄の一枚の着物を前にして、ひとはそこになにを見るのでしょうか。 濃淡2種類の藍をベースにして、白と黄色の線が縦横に走っています。よく見れば白の横線は直線ではなく鎖状。着物の静かな印象の中にわずかな動きをもたらし…