2015年12月18日
遠くに沈みゆく夕陽に心震わせながら、ふと足元に目を落とすと小さな花が咲いている。ふたつを同時に見ることはできないが、見ることができないからこそその間に吹き渡る風を肌に感じつつ、風景の美しさを体感する。風景とは風の景(影)。その揺れ動きをわたしたちは愛でることができるのだ。
釜我敏子さんの型絵染を見ていると、ふとそんなことを考えます。遠くの眺望の美しさと近くの凝視の美しさが同時に託され、見ている私の目は遠くに近くにワープを繰り返し、ここではないどこかへと誘われます。
「型と花と 釜我敏子の型絵染」は12月22日から後期展示が始まります。12月28日から1月4日まで年末年始のお休みをただいた後、会期は1月17日まで。ぜひ足をお運びいただき、実際に遠くから近くから、布(着物)をまるで眼で触るように見てください。見えなかったものがいろいろ見えてくるはずです。「眼で触る」などという非理性的に聞こえることが、人は想像の力によってできてしまう生き物であることを信じてみてください。(竹口)