2016年1月12日
現在、全国を巡回中の展覧会「画家の詩、詩人の絵」に古賀春江の「窓」を貸出しています。
本作は、パウル・クレーの絵画に触発された古賀春江が童画的な作風を追求した時期を代表する作品です。ほのかな色彩とやわらかなタッチとで構成された画面には、古賀の個性が発露されています。さらに、この頃古賀は詩を発表しはじめ、自作の絵画に「解題詩」を書くなど、絵画と詩とを一体化しようと試みていました。彼の創作世界を往還する「ことば」と「絵画」のシンフォニーに耳を傾けてみましょう。
解題詩「窓」 古賀春江
沢山な窓のある家、一つ一つの窓から顔が出てゐる
顔には地図が描いてある。
みんなの地図が読める、鳥籠も描いてある、
花もあり、コップも、望遠鏡も、並ぶ顔、水筒、霧、
黎明とパイプも
確実につながつてお互いの陰翳を持つてゐる
痙攣する避雷針の窓からまた一つの顔を見ないか、
揺れる、揺れる、椅子が、星が、
黒い夜の絵具は沈黙して語らない―その後の顔等に
就いては
今はただ明るく揺れる顔がある
「画家の詩、詩人の絵」展の会期、会場は次のとおりです。ぜひお出かけください。
碧南市藤井達吉現代美術館(2015年11月17日~12月20日)
姫路市立美術館(2016年2月13日~3月27日)
足利市立美術館(2016年4月9日~6月12日)
北海道立函館美術館(2016年6月18日~8月7日)
(高山)