福岡県立美術館
Fukuoka Prefectural Museum of Art
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【印象派展】4月20日(水)はギャラリートークを開催

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先週の4月16日(土)に「色彩の奇跡 印象派展」が無事開幕を迎えました。
前日4月15日(金)の開会式では、小川洋県知事をはじめ関係各位によるテープカットのあと、67点の珠玉の名画が公開されました。

あす4月20日(水)14:00からは、会場内にて担当学芸員によるギャラリートークを開催します。ギャラリートークでは、セザンヌを起点とし印象派をとりまく時代の流れ、さらには舞台を移したドイツ印象派の特徴など、展覧会の章構成にそってより詳しく、より丁寧に解説してまいります。当日の入場券をお持ちの方は申し込み不要でどなたでも参加いただけます。ギャラリートークは会期中2回のみの実施(第2回は5月18日)になりますので、ご興味のある方はふるってご参加ください。

「色彩の奇跡 印象派展」は、全作品がドイツ、ケルンのヴァルラフ=リヒャルツ美術館&コルブー財団のコレクションです。総勢40名の巨匠たちの作品はいずれも名品揃い。ぜひこの機会をお見逃しなく。(横山)

 

4月11日~4月16日までの貸館情報

現在、県立美術館では美術団体や個人など一般の皆さまに1階の展示室をお貸ししています。

1階展示室 山下俊雄写真展「奥八女星野村」
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自然豊かな星野村。1日2日訪れただけでは触れることの出来ない、生活や風景を捉えたモノクロ写真が展示されています。「ひとびとの生活が確かにある今の星野村を記録したい」という撮影者の想いが伝わってくる写真展です。

みなさまのお越しをお待ちしています。(新谷)

 

4月5日~4月10日までの貸館情報

現在、県立美術館では美術団体や個人など一般の皆さまに1階と3階の展示室をお貸ししています。

1階彫刻展示室 専門学校九州ヴィジュアルアーツ写真学科進級制作展/卒業制作選抜展
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専門学校九州ヴィジュアルアーツ写真学科1年生の学年末写真展と同時に2月に行われた卒業制作展より選抜された作品が紹介されています。学生ならではのみずみずしい感覚をぜひ作品を通して感じてください。

3階1号室 福岡工業大学エクステンションセンター 第14回あとりえ展IMG_7737ところせましと並ぶ作品たち。福岡工業大学の生涯学習講座に通う方総勢50名のグループ展です。年々作品数が増え、指導する先生は、飾るのが大変だとうれしい悲鳴を上げていらっしゃいました。油絵、水彩などなどバラエティ豊かな作品展です。

3階2号室 野口正幸合同生徒作品展
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TNC西日本文化サークル、ギャラリー花うさぎ、アトリエNOGUCHI絵画教室による合同絵画展。2年に1度開催するそうです。

3階3号室 西南学院書道部55周年、中野游山遺作展
IMG_7739創部55周年という節目に西南学園大学書道部OB・OGによる書作展です。併せて中野游山氏の遺作展も同時に開催しています。迫力ある筆の運びを間近でぜひ見てください。

3階4号室 一語一絵 宮本幹太展
IMG_7740宮本幹太さんの個展です。日本画・水墨画に博多弁の誌を書き入れ表現した作品が展示されています。写真に写っているのは宮本さんご本人です。

やっと暖かくなり(今日は暑いくらいでした)、外に出るのが楽しい季節になりました。ぜひ、ケンビに遊びに来てください。(新谷)

 


【印象派展】展覧会オフィシャルサイト公開!

キャラクター整列

 

4月16日(土)から開催の「色彩の奇跡 印象派展」展覧会オフィシャルサイトが公開されました!
http://inshouha.com/index.html  (←クリックすると移動します)

オフィシャルサイトでは、展覧会の章構成などもご紹介しています。
印象派とその前後の流れを展観するこの展覧会。その概要をかんたんにご紹介していますので、ぜひご覧になってみてください。
今後内容も充実させていきますので、お楽しみに!

上画像は、本展覧会に展示される巨匠たちのキャラクター。サイトや新聞、展覧会場などで登場していきますので、目印として注目していただけると幸いです。(横山)

 

福岡県立美術館の新年度がはじまります

★R0046404 (2) 2月からお休みしていた福岡県立美術館ですが、いよいよ平成28年3月29日(火)にオープンいたします!

開館とともに、いよいよ新年度の展覧会も始まります。このサイトにも年間の展覧会スケジュールを公開していますので、ぜひチェックされてみてくださいね。
https://fukuoka-kenbi.jp/exhibition (←クリックすると移動します)
グローバルな特別展や地元密着型の企画展など、いろいろな視点でさまざまな作品を紹介してまいります。どうぞお楽しみに!

上の写真は臨時休館前から引き続きの開催となります、コレクション展「あなたの暮らしのための工芸」の会場風景です。工芸作品を「暮らし」の目線から見直し、絵画や彫刻作品を工芸的な視点から眺めてみるこの展覧会では、ジャンルもさまざまなたくさんの作品が皆さまをお迎えいたします。
3月29日(火)休館明け初日に再オープンし5月8日(日)まで、4階展示室での開催となりますので、どうぞお見逃しなく。

また、4月16日(土)には「色彩の奇跡 印象派展」が開幕を迎えます。
https://fukuoka-kenbi.jp/exhibition/2016/kenbi6733.html (←クリックすると移動します)
ドイツのヴァルラフ=リヒャルツ美術館&コルブー財団より、ゴッホ《アルルのはね橋》など、巨匠たちの珠玉の名画が一堂に会するこの展覧会。皆さまをお迎えするための準備が段々と進んでまいりました。講演会やワークショップも次第に定員に近付きつつありますので、気になるイベントにはお早めにお申し込みください。

須崎公園の桜もほころび始めました。お気軽に福岡県立美術館にお立ち寄りいただけると幸いです。
いよいよ開館。また1年、どうぞよろしくお願いいたします。(横山)

 

 

とっぷらいと103号

とっぷらいと103号表紙写真(撮影:櫻木雅美)

とっぷらいと103号表紙写真(撮影:櫻木雅美)

福岡県立美術館レター「とっぷらいと」が101号でリニューアルしてまる1年。いよいよ103号ができました。今回の表紙写真はしっとりとモノクローム。見れば見るほど奥行きが生まれるふしぎな写真です。桜を愛でる悦びのうちにもさまざまな感情が去来する、そんな春らしい写真だと思います。

表紙写真を撮ってくれている櫻木雅美さんには、最初にわたしから言葉を伝えます。櫻木さんはそれを受け、イメージを膨らませ、写真を撮り、選び、印画紙に焼き付けます。その言葉が、じつは表紙を開いたところにあるメッセージとなっています。今回はこんなかんじ。

 

 えらぶことになれてしまったぼくらは
 ついつい忘れてしまっているね
 もともとだれかがつくってくれて
 それがここにあるってことを

 つくるようにえらぶことも
 えらぶことでつくることもできるんだ

 まだ見ぬだれかのためにつくることだって

 できるんだ

 

みなさんには、どんな風景が見えますか?(竹口)

 

福岡県立美術館レター「とっぷらいと」103号

めまぐるしさを生きぬく絵画(「色彩の奇跡 印象派展」紹介)
アルバムの魔法(原博文『いとおしい、あなたへ』より)
コレクション通信 太田熊雄《舟徳利》
日日の糧 『マザー・グースと三匹の子豚たち』『「いのち」を養う食』「パウル・クレー だれにもないしょ」展
猫とひかりの須崎公園

表紙写真 櫻木雅美
デザイン 矢野貴昭(vielen dank!)

【印象派展】イベント情報を公開しました

ポール・セザンヌ《洋梨のある静物》1885年頃 ヴァルラフ=リヒャルツ美術館&コルブー財団、ドイツ、ケルン  Wallraf-Richartz-Museum & Fondation Corboud, Cologne, Germany

ポール・セザンヌ《洋梨のある静物》1885年頃
ヴァルラフ=リヒャルツ美術館&コルブー財団、ドイツ、ケルン
 Wallraf-Richartz-Museum & Fondation Corboud, Cologne, Germany

 

 

 

 

 

 

 

 

3/28(月)まで休館中の福岡県立美術館ですが、開館、そして4/16(土)からの「色彩の奇跡 印象派展」開催に向けて、着々と準備が進んでおります。

さて、展覧会のチラシや新聞などをご覧になった方はご存知かと思いますが、「色彩の奇跡 印象派展」では、会期中さまざまな関連イベントを開催いたします。先日より各イベントの日時や内容などを『イベントに参加する』ページにて公開しておりますので、ぜひチェックされてみてください。
https://fukuoka-kenbi.jp/event (←クリックするとイベントページに移動します)

福岡県立美術館で開催するイベントに参加をご希望の方は、福岡県立美術館(TEL 092-7715-3551、FAX 092-715-3552)まで 電話またはFAXにてお申し込みください。また、お申し込みの際には必要事項(①氏名 ②電話・FAX番号)を伝えることもお忘れなく。
美術館は休館中ですが、平日の9:00~17:00は電話でのお申し込みにも対応できます。先着順での受付になりますので、お早めにご連絡ください。

また、音声ガイドを担当した林 綾野さんによるトーク&ディナーショーについての参加申し込みやご質問に関しましては、会場の西鉄グランドホテル(TEL 092-781-0811)までお問い合わせください。

申し込みなし、定員なしのイベントもございますので、お気軽にご参加ください。
また、近日中に「色彩の奇跡 印象派展」オフィシャルサイトも公開予定です。より詳しく展覧会を紹介していきますので、お楽しみに!(横山)

【型と花と】展覧会の記録

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福岡県春日市に住まい、40年余りにわたって型絵染作家として活動してこられた釜我敏子さんの活動と姿を紹介する展覧会「型と花と 釜我敏子の型絵染」が2016年1月17日をもって終了いたしました。前年の11月29日から始まって会期37日間、4,411人の来場者を迎え、釜我さんの作品の魅力を伝えるだけでなく、その生き方を知り学びぶことができたと思います。

展覧会から得られた学びを、ではどのようにつないでいくことができるのか。そのことを考えつづけ、また機会や場を開きながらみなさんと対話できることを願っています。

ここにはひとまずの記録として、会場写真と会場に掲示していたテキスト3つをあげておきます。ふと思い出した時に、見返したり読み返してもらえればうれしく思います。(竹口)

 

ごあいさつ

このたび福岡県立美術館では、型絵染作家 釜我敏子(かまがとしこ/1938~ )の第22回福岡県文化賞(2014年)受賞を記念して、釜我の初期から現在までの仕事を紹介する回顧展を開催します。

釜我を型絵染の世界へと導いたのは、木版摺更紗の技法を独自に確立した鈴田照次の作品との出合いでした。手習いとしてろうけつ染めの教室に通うなかで本格的な創作欲が高まりつつあった頃、型の繰り返しが実現する圧倒的な美しさを目の当たりにし、釜我の一からの挑戦が始まりました。佐賀大学で教鞭をとっていた城秀男や重要無形文化財「長板中形」保持者 松原定吉の息子たちであり「松原四兄弟」と呼ばれて活躍していた松原福与、利男、八光、与七との縁を得て、彼らの教えを請いつつ修練を積み、釜我は昭和51年(1976)の第23回日本伝統工芸展に初出品、初入選を果たしました。その後も家庭の仕事と作品の制作を両立させながら、決して妥協することのないものづくりを実践します。そして平成19年(2007)の第54回日本伝統工芸展では念願の受賞。近しい人たちからたくさんの祝福を受けるとともに、同じく染の道を志す人たちに大きな希望を与えることになりました。

「最小限の型紙で最大限の表現を」。釜我が繰り返し口にし、自らにも課している信条です。絵を描くように自由に模様を染めるのではなく、意匠にあわせて型紙の数を増やすのでもなく、釜我は型の制約を引き受けることでその繰り返しによる特質を最大限に活かそうと手と心を尽くします。そうであるからこそ釜我の型絵染着物は型染としての必然性を鍛えられ、表現としての強度を獲得するのです。それはまるで自然がただ自然としてあるがゆえに美しく、私たちの目を励まし、心を癒してくれるのに似ているでしょう。

展示室に並んでいる着物は、釜我の長い創作活動からすればごく一部にしかすぎません。しかしここから広がる景色は無限であり、釜我という人物から学ぶべき智慧は膨大にあります。そのかけらだけでもここで受け取ってもらうことができれば、うれしく思います。

2015年 福岡県立美術館

 

展覧会に惜しみない協力をくださった釜我敏子氏に、まず心からの感謝を申し上げます。あわせて貴重な作品をご出品いただいた美術館と個人所蔵家の皆様、その他展覧会の実現にお力添えいただいた全ての方々に深くお礼申し上げます。

九州産業大学美術館、佐賀県立博物館・美術館、東京国立近代美術館、日本システムサプライ、日本工芸会西部支部  荒牧由紀子、江口博明、小幡美和、川副麻理子、喜多恵子、郡 美恵子、後藤ひろみ、城塚蓉子、築城則子、續 久仁子、廿楽香代子、虎島英子、中西英貴、平野公憲、古屋恵代、宮原香苗、山口知子、笠 和子(五十音順、敬称略)

企画:竹口浩司(福岡県立美術館)/デザイン:尾中俊介(Calamari Inc.)/空間:坂崎隆一/写真:山﨑信一(STUDIO PASSION)/映像:越智正洋/会場看視:河原裕子、鳥谷さやか、中村千東、平坂麻衣、古川ちずる

 

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型絵染着物《麦秋》1988年、当館蔵

型絵染着物《麦秋》1988年、当館蔵

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揺れ動く着物という空間

「型絵染」とは読んで字のごとく型(紙)を使って絵(模様)を染める技法のことです。型染の一種ですが違うところは大きく二つ。ひとつは、たとえば江戸小紋や長板中形が細密な文様をすっきりと染めあげる技法であるのに対して、型絵染は意匠に富んだまるで絵のような模様を染めだすところ。さらにひとつは、前者が型彫り(型紙を彫る作業)、糊置き(型紙を用いて生地に防染のための糊をひく作業)、色差し(染める作業)などの工程を全て分業化しているのに対して、後者は下絵(デザイン)から染めまでの全工程を一人でこなすところに特徴があります。

その歴史は古くなく、昭和31年(1956)に芹沢銈介の型染技法が重要無形文化財に認定されるに際して考案され、型絵染という言葉がはじめて使われました。沖縄の紅型に魅せられた芹沢が、研究の末に切り拓いた独自の型染技法はその後も脈々と受け継がれ、同じく重要無形文化財保持者である鎌倉芳太郎や稲垣稔次郎たちもまたそれぞれの型絵染の表現を確立したのです。

釜我敏子の型絵染の特徴は、繊細な模様の徹底した繰り返しにあります。ほとんど余白なく模様で埋め尽くされる着物は、一見構図のヴァリエーションに乏しく映るかもしれませんが、仔細に見ればありとあらゆる技法的な実験が行われていることが分かります。ある時は模様全体が大きくうねり、ある時はリズミカルな模様が心地よく響き、またある時は色のグラデーションが模様に揺らぎを与えます。釜我の着物の前に立つ私たちは、眼よりも先にまず身体がその美しさに感応していることを知るでしょう。

小さな型の繰り返しだからこそ作家の手を離れ、着物という枠さえ離れて招来しうる大きく伸びやかな空間があります。釜我の着物は見る角度によって、あるいは見る時によっても同じ模様が図になったり地になったりとその関係が揺れ動き、捉えがたさがそのまま空間の厚みとなって私たちの身体を丸ごと包み込んでしまいます。釜我の着物が自然に似ているというのは、釜我が野の草花をモチーフにしているからというよりむしろ、見られることによって広がりゆく空間の親密さと懐深さにあるのです。

 

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映像《ここからの景色》撮影・編集 越智正洋、2015年

映像《ここからの景色》撮影・編集 越智正洋、2015年

遅く歩くことのできる人

釜我敏子の表現は日々の散歩から始まります。愛犬とともに自宅兼工房を出かけ、まだ自然の多く残る環境のなかで釜我はさまざまな出合いに足を止めます。道端に楚々と咲く小さな花、人知れず堂々と枝を伸ばす大きな木。その生命力に心動かされ、釜我はありとあらゆる植物を表現のモチーフへと仕立てあげるのです。

77歳の喜寿を迎えた釜我は「いつまでも驚く気持ちを持ちつづけて」と言います。ただしそれは「子どもの心を忘れないように」というのとは少し違って見えます。植物について豊富な知識を持つ釜我ですが、だからこそ「この花がこんな葉のつけ方をするなんて」「あの花の隣にこの花が咲くことがあるなんて」といった驚きが生まれることになるのです。暮らしのなかで遭遇する小さな驚きを原動力として、想像を膨らませ、イメージ図をいったん大きく描きだした後に釜我は小さな型紙の繰り返しによるデザインへと昇華させる難しい作業へと移っていきます。

世界はその隅々にまで驚きに充ちてあります。釜我はそれらの一つひとつに声を挙げ、驚きを再発見し、自らの表現へと活かします。それはしかし、驚きの源泉へと一足飛びに到達しようとするものではなく、むしろ到達の実現性をなるべく先送りにしながら、歩幅を微分的に小さくし、歩くスピードをどんどん遅くしながらそこに近づいていこうとする営みなのです。到達する瞬間をどれだけ遅らせることができるのかが、世界の途方もない密度や厚みを証明することにもなるでしょう。

絵を自由に描くのではなく型紙の上へとデザインを落とし込み、筆で直接描くのではなく渋紙を彫刻刀で彫り、絵具で塗るのではなく染料で染める。技法による制約、素材による不自由の方に自らの表現を寄せて技術を鍛えることは、作家の個性を縛ると言えば縛りますが、同時に世界へと開いていきます。それゆえ釜我は、自らの手で染めあげた着物を前にして「こんな空間が広がるなんて」てもう一度驚くこともできるのです。

釜我にとって型絵染という技法は、驚きに充ちた大きな世界を表現というエゴの内に小さく私有するのではなく、さらなる驚きをもって世界へと照らす返す方法でもあります。それこそが、自身の手を超えたあるがままの世界と、しかし手という無限の可能性を通して向き合おうとする態度なのです。

 

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