現在、福岡県立美術館4階展示室では「九大百年 美術をめぐる物語」展を開催しております。(~11月13日まで)
http://fukuoka-kenbi.jp/
その展覧会の出品作品のひとつに、髙島野十郎の「梨の花」があり、髙島野十郎特設コーナーに展示している5点の作品(http://fukuoka-kenbi.jp/reading/yajyuro/kenbi7878.html)にあわせ、合計6点の作品を当館でご覧いただくことができます。
「梨の花」は、野十郎が昭和5年から8年までの間、ヨーロッパへ留学していた頃に制作された作品です。純白の花が咲く梨の木を中心にとらえ、天にむかって放射状に広がるような画面構成がとられていますが、うねりながら立ちのぼるような曲線や色調にはゴッホの影響を見てとることもできるでしょう。本作は、帰国後まもなくの昭和10年2月に、博多中洲の生田菓子舗で開催された「髙島野十郎滞欧作品油絵個人展覧会」に出品されており、同展の案内状には、九州帝国大学医学部教授の中山森彦や小野寺直助ら、美術を愛好していた九大関係者も名を連ねています。そしてその後、野十郎の親族から、九州大学附属病院の関連施設に寄贈されたという来歴を持つ、九大とゆかりの深い作品です。
「九大百年 美術をめぐる物語展」では、明治44年に福岡の地に開学した九州帝国大学がひとつの文化的磁場となって、福岡の地域文化を振興したということを、九大とゆかりの深い美術作品を通して振り返る試みです。ぜひ、展覧会場で、髙島野十郎「梨の花」をはじめ、たくさんのすぐれた作品を味わってみてください。(高山)